‘大島 千帆’ カテゴリーのアーカイブ

社会福祉援助技術としての社会調査(予告です)

2010年2月7日 日曜日

oshima社会調査のうち、社会福祉分野で行われる社会調査があります。多くは「社会福祉調査」と呼び、前回触れたように社会福祉援助技術(ソーシャルワーク/ social work)のひとつとして位置付けられています。

このNPOサーベイの活動を行うなかで、社会福祉援助技術としての社会調査とは何ぞや? という点を考える機会がたびたびありました。

と、申しましても、このblogに目を通して下さる方の多くは社会福祉分野の方ではない、ように思われます。そこで、次回から数回に分けて、「社会福祉援助技術としての社会調査」をテーマに更新していきたいと思います。前提となる社会福祉援助技術の全体像にも触れつつ解説を試みます。

よろしくお付き合いください。

(つづく)

NPOサーベイ設立の私なりのこころざし(3)

2010年1月15日 金曜日

(前回よりつづき)

oshima前回、「社会調査をするひと」だけでなく、「社会調査を受けるひと」が自らの実践を可視化し、次の世代に伝えることが重要、ということを指摘しました。

この点について、もう少し考えてみたいと思います。

もともと社会調査は、社会福祉の援助技術のひとつとして位置づけられています。私自身も「社会福祉援助技術各論」という名称の授業が社会調査の基礎に相当する授業であった記憶があります。

このように援助技術のひとつにも関わらず、福祉現場はあくまで「社会調査をうけるひと」の役割に徹していたように思います。

しかし、社会福祉の実践を可視化し、次の世代に伝えるためには、2つの転換が必要です。

ひとつは、受け身の「社会調査をうけるひと」はやめることです。もうひとつは、自らが「社会調査をするひと」「社会調査を学ぶひと」になる可能性を否定しないことです。

福祉現場で働く方々は、自分たちの実践活動そのものや、日々の支援記録など実践を可視化するための材料を沢山持っています。
その価値に自分たち自身も気づいて大切にしてほしいのです。「社会調査をするひと」は、「社会調査をうけるひと」からもっともっと厳しい目が向けられてよいと思うのです。
また、自らの実践を高め、次の世代に伝えるためにも社会調査にもっともっと主体的に関わってもらいたいのです。

平成19 年に公布された「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律」によって社会福祉士の国家試験受験科目に「社会調査の基礎」という新しい科目が加わり、平成21年度から新カリキュラムがスタートしています。
(この時期と同じくしてNPOサーベイの活動がスタートしたことは個人的にもとても嬉しいことです)

私自身も、社会調査をするひとでもあり、学ぶひとでもあります。時には社会調査を受けるひとにもなります。

NPOサーベイは、ゆるやかな場ではありますが、こころざしはあります。NPOサーベイを様々な立場から社会調査に関わる人がつながる場にすること通じて、私を育ててくれた福祉の現場に感謝の意を表したいと思うのです。

(おわり)

NPOサーベイ設立の私なりのこころざし(2)

2009年12月7日 月曜日

(前回よりつづき)

oshima団塊世代の定年退職に伴う課題が様々な分野で取り上げられています。これまで福祉の現場を引っ張ってこられたリーダー的存在の方々も、退職の時期を迎えています。これらの方々が一線を退く前に、豊富な経験によって培われた知識・技術を次の世代に継承してゆく必要があります。この点は、他の分野でも同様の課題です。

ただし、私は社会福祉特有の課題もあると考えています。社会福祉の場合、「援助技術」が継承してゆく技術のひとつといえますが、中には言葉で表現することが難しいものや、その分野に関わっていない人には理解することが難しいものがあります。

援助技術は社会福祉の専門性と深く関わるものである点から考えると、専門性が何であるのか見えにくいという課題にもつながります。

つまり次の世代に「何を」「どのように」継承していくか、ということを考えたときに、「どのように」にあたる部分だけでなく、「何を」という部分も見えにくい場合がある、ということです。

この点を社会調査に引きつけて考えると、社会調査は、現場実践の専門性を次の世代に継承するためにもっともっと活用されるべきだと思うのです。

そして、「社会調査をするひと」だけでなく、「社会調査を受けるひと」が自らの実践を可視化し、次の世代に伝えることが重要だと思うのです。

(つづく)

NPOサーベイ設立の私なりのこころざし(1)

2009年11月14日 土曜日

oshimaNPOサーベイの設立メンバーの中で、私は異色といえるでしょうから、自己紹介も兼ねNPOサーベイ設立の私なりのこころざしを語ろうと思います。

私は、「気づかない人は気づかない,控えめな大学(本当にその通りなのです)」で社会福祉を学んできました。

が、学部生時代はホームヘルパーのアルバイトに明け暮れ、社会調査を真面目に学んだ記憶がありません(先生方、ごめんなさい)。調査に主体的に関わるようになったのは、大学院入学後です。

大学院入学後は、調査に関して知識も技術も非常に乏しかったので、とにかく調査に首を突っ込んで関わるようにしていました。

その結果、自分が中心となって行わせていただいた社会調査以外にも、様々な分野の社会福祉領域の調査現場を垣間見ることができたと思います。

この大学院生時代の経験で印象に残っていることがあります。インタビューをさせていただいたアイヌの語り部のおばあさんの言葉です。

「自分は文字を書くことができない。自分が死んだら、先祖から受け継いできた言い伝えがここで途絶えてしまう。言い伝えを記録に残して次の世代に伝えたい。だからまだ死ねない」。

アイヌの方々に限らず、様々な分野で似たようなことが起きているように感じます。もちろん福祉の現場でも同様です。

(つづく)