2010年1月 のアーカイブ

社会調査の系譜とNPOサーベイ(4)

2010年1月23日 土曜日

(前回よりつづき)

matsuoルイス・ハインの話題をつづけます。前回はハインがカメラを手にして「ソシオロジカル・フォトグラファー」と呼ばれるようになり、児童労働の調査に乗り出したところまでお話ししました。

ハインはフィールドワークを重ね、数多くの働く子どもたちの写真を撮影することに成功しました。これらの写真の多くには一見してわかる特徴があります。被写体である子どもたちのまなざしです。鋭く、真っすぐに、わたしたちを見つめています。

Manuel

nn

子どもたちは撮影されることに緊張していたのでしょうか。見知らぬ撮影者を前に身構えていたのでしょうか。それともハインによる演出でしょうか。興味はつきません。

ハインの活動は写真を撮るだけでは終わりませんでした。これらの衝撃的な写真を携えて、世間に児童労働禁止を訴えていきます。

Making-Human-Junk表現の工夫もしています。写真をただ見せるのだけでなく、それらを有機的に並べ、キャプションをつけることで、訴求力を高める工夫をしました。フォトストーリー法と呼ばれたドキュメンタリー写真の伝統的な方法ですが、それを考案したのはハインだとされています。

こうしたハインの活動は社会学の世界とも交錯しました。以前このブログでとりあげたポール・ケロッグとも深い関係があり、ピッツバーグ調査に参加しています。ピッツバーグでも人々の労働と生活の諸相をカメラに収めました。

ハインはアカデミズムの外側にいる人でした。しかし見方を変えれば、社会調査の本筋を歩んだ人でもありました。

「学問のための学問」という意味でのアカデミックな活動には一切関わることはありませんでしたが、自分の関心を追究すべくフィールドに出て、そこで得たものを世間に向けて表現し、訴えていったのです。少なくとも私にとっては、尊敬すべき社会調査の先人であり、憧れのアイドルの一人なのです。

NPOサーベイ設立の私なりのこころざし(3)

2010年1月15日 金曜日

(前回よりつづき)

oshima前回、「社会調査をするひと」だけでなく、「社会調査を受けるひと」が自らの実践を可視化し、次の世代に伝えることが重要、ということを指摘しました。

この点について、もう少し考えてみたいと思います。

もともと社会調査は、社会福祉の援助技術のひとつとして位置づけられています。私自身も「社会福祉援助技術各論」という名称の授業が社会調査の基礎に相当する授業であった記憶があります。

このように援助技術のひとつにも関わらず、福祉現場はあくまで「社会調査をうけるひと」の役割に徹していたように思います。

しかし、社会福祉の実践を可視化し、次の世代に伝えるためには、2つの転換が必要です。

ひとつは、受け身の「社会調査をうけるひと」はやめることです。もうひとつは、自らが「社会調査をするひと」「社会調査を学ぶひと」になる可能性を否定しないことです。

福祉現場で働く方々は、自分たちの実践活動そのものや、日々の支援記録など実践を可視化するための材料を沢山持っています。
その価値に自分たち自身も気づいて大切にしてほしいのです。「社会調査をするひと」は、「社会調査をうけるひと」からもっともっと厳しい目が向けられてよいと思うのです。
また、自らの実践を高め、次の世代に伝えるためにも社会調査にもっともっと主体的に関わってもらいたいのです。

平成19 年に公布された「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律」によって社会福祉士の国家試験受験科目に「社会調査の基礎」という新しい科目が加わり、平成21年度から新カリキュラムがスタートしています。
(この時期と同じくしてNPOサーベイの活動がスタートしたことは個人的にもとても嬉しいことです)

私自身も、社会調査をするひとでもあり、学ぶひとでもあります。時には社会調査を受けるひとにもなります。

NPOサーベイは、ゆるやかな場ではありますが、こころざしはあります。NPOサーベイを様々な立場から社会調査に関わる人がつながる場にすること通じて、私を育ててくれた福祉の現場に感謝の意を表したいと思うのです。

(おわり)

頌春

2010年1月1日 金曜日

staff新年あけましておめでとうございます。本年もより充実した活動ができるようにしたいと思います。いっそうのご指導ご高配を賜りますようお願い申し上げます。