2012年2月 のアーカイブ

「社会調査データのアーカイブ化」開催

2012年2月21日 火曜日

来る3月18日に研究会を開催いたします。

テーマ :
社会調査データのアーカイブ化―「原爆と人間アーカイブ」の試み

話題提供 : 濱谷正晴(一橋大学名誉教授)

日時 : 2012年3月18日(日)14:00~18:00

場所 : 早稲田大学早稲田キャンパス26号館602教室
 (http://www.waseda.jp/jp/campus/waseda.html)

趣旨 :
近年、社会調査のデータをいかにアーカイブ化するのかをめぐって議論が高まっています。

それは、社会調査を基にした研究論文を発表するだけではなく、社会調査によって得られたデータそのものを、整理・保存・公開することの重要性が認識されてきたことを意味しているように思います。

そしてそれは同時に、これまで行われてきた多くの社会調査のデータが、研究者によって私蔵・散逸されてきたことに対する反省を意味しているように思います。

これまで、実に多くの社会調査が行われてきましたが、そこで得られたデータは、どのくらい活用されてきたのでしょうか。また、現在も活用できるデータは、どのくらいあるのでしょうか。かなり多くの社会調査のデータが、ほとんど活用されないまま、今後も活用できないものとなっているのではないでしょうか。

しかし、そうした社会調査のデータの中には、現在の社会において、もしくは未来の社会において、大変価値あるものが多く含まれていると考えられます。そして、そのような価値ある社会調査のデータを、未来に生きる人びとが活用可能なものとして整理・保存・公開することが、今後、求められていくように思います。

そこで、今回の研究会では、現在、原爆被爆者調査のアーカイブ構築に取り組んでおられます濱谷正晴先生に話題提供をお願いしました。

濱谷先生は、一橋大学での45年間にも及ぶ原爆被爆者調査のデータを、多くの未来に生きる人びとがアクセス可能なデータベースとして広く公開し活用できるようにする「原爆と人間アーカイブ」の構築に取り組んでおられます。

話題提供では、そうした原爆被爆者調査の膨大な蓄積をアーカイブとして残すことの実際についてお話しいただきます。また当日は、「原爆と人間アーカイブ」に関わられている方々にもコメンテーターとして参加していただく予定です。

そして、今回の研究会では、そうした話題提供をもとに、社会調査データのアーカイブ化をめぐる諸問題について考える機会としたいと考えております。

「ビデオカメラは調査の眼」報告後記

2012年2月21日 火曜日

2011年12月18日に開催されました研究会「ビデオカメラは調査の眼―その実践経験から」で話題提供をしていただきました岩舘豊さんより、報告後記をいただきましたので紹介いたします。

「NPOサーベイでの話題提供をふりかえって」
岩舘 豊(一橋大学院)

2011年12月18日のNPOサーベイ第6回企画「ビデオカメラは調査の眼」では、話題提供をする機会をいただき、本当にありがとうございました。

こうした機会を設け、企画準備に尽力してくださった皆さんに感謝します。また当日に、さまざまなかたちで応答してくださった皆さんにも御礼を申し上げます。

たくさんの「宿題」をいただいた、とても「贅沢」な時間でした。投げかけていただいたコメントや問いは、いずれもすぐには「答え」が出せそうにありませんが、少しずつでも応えられるよう今後とも取り組んでいきたいと思います。
 
調査者が書き記すモノグラフやエスノグラフィーが、(その営みのなかにさまざまな緊張関係や権力作用があるとしても)固有の質感と豊かさをもった社会的世界のありようを伝え得るものだとしたら、映像/ビデオカメラはそのために有用な「道具」の一つだとあらためて感じています。

五感を生かした社会調査の実践と錬磨に向けて、克服すべき諸課題は冷徹に見据えつつ、でもどこかで楽観する心を大事に保ちながら、フィールドでの作業を焦らずに続けていこうと思っています。今度ともどうぞよろしくお願いします。

「ビデオカメラは調査の眼」コメント(2)

2012年2月21日 火曜日

2011年12月18日に開催されました研究会「ビデオカメラは調査の眼―その実践経験から」にご参加くださいました方々からさまざまなコメントをいただきました。そのいくつかを紹介いたします。

・後藤範章さんより
 
4時間が非常に短く感じられました。岩舘さんの発表内容(ビデオ作品)もさることながら、参加者から出された意見及びやり取りも極めて刺激的で有意でした。

・有末賢さんより

さまざまな場面でのインタビューが、その場の雰囲気をよく伝えていて興味深かった。

映像技術としては、画面が少し揺れたり、見にくかったりしたところはあったが、バックミュージックなど編集にも工夫がこらされていた。

これらの映像の中で、印象に残ったインタビュー内容は、「Cユニオンに入らなくても、それで会社側の人とうまく通じていればそれはそれでいいんじゃないですか」というあたりです。

・匿名の方より

長い間関わってきたことで得ることができた言葉が映像の中からくみとれました。編集しない映像もおもしろいかもしれません。

「ビデオカメラは調査の眼」コメント(1)

2012年2月15日 水曜日

2011年12月18日に開催されました研究会「ビデオカメラは調査の眼―その実践経験から」にご参加くださいました方々からさまざまなコメントをいただきました。そのいくつかを紹介いたします。

・川越靖子さんより

3回に分けて撮影した映像から、初回に撮影した時と2回目、3回目と撮影した時とでCユニオンの3名のおかれている状況や精神状態の移り変わりが感じとることが出来ました。

撮影を進めていく中で、インタビューよりも、行動力や活動を撮影するようにしていったことが、彼らの活動力を感じさせることになっていたと思います。

都庁に提出する為の書類を黙々と作成している様子など、彼らの団結力を感じとることが出来ました。背景にうつっている書類などによってどのように活動を行っているのかという情報量が増していると思いました。

・間庭 智仁さんより

私は量的調査が一応専門ということになるのですが、授業では質的なものもかじっています。今回非常に刺激をいただきました。数字で扱えないもの、映像でしか扱えないものにいかに接近していくか、修論では扱えないと思いますが、考えていきたいと思います。

・石原晋吾さんより

映像の対象者が不明(誰に向けたものか)であったが、逆にそれが受け手の解釈を大きく広げていく可能性があることを感じた。ぜひ継続して「ひとつの作品」として作り上げていただきたいと思う。

研究成果としての映像の役割については、テキストデータとの関連も含めもう少し議論が必要なことかもしれない。

「ビデオカメラは調査の眼」記録(3)

2012年2月12日 日曜日

2011年12月18日に開催されました研究会「ビデオカメラは調査の眼―その実践経験から」の中で交わされました議論について、そのいくつかをご紹介いたします。

[調査者の立場性]
・対象に寄り添うという研究者の立場性は?むしろ、映像で対象に介入することもある。

・映像作品をつくるとき、映像を見せる対象によってその編集のあり方が変わる。

・映像作品の制作における恣意性の問題や「ヤラセ」の問題がある。テレビ局のインタビューなどは事前に内容が決まっていることがある。

[映像で調査する新しいあり方]
・社会学者としての映像技術を考える必要性がある。

・撮影した映像を対象者に見せることによって、また新しい語りが引き出せるのではないか。

・人によって受け止め方は違うが、現場に連れて行ってもらえるという側面はある。調査者の追体験をすることができる。