2012年9月 のアーカイブ

「量的調査研究の意義や疑問」記録(1)

2012年9月22日 土曜日

2012年7月29日に開催されました研究会「量的調査研究の意義や疑問」の中で交わされました議論について、そのいくつかをご紹介いたします。

[質問と応答]
〈本調査の質問紙は?〉
・本調査はプレ調査をしっかりやってから質問紙を作った。現場の人の意見をもとに質問紙を修正した。

〈回収率と自由記述については?〉
・質問内容が虐待なので、思ったよりも回答が返ってきた。自由記述に色々と書いてくれた人が多かった。

〈フィードバックは?〉
・フィードバックという点では、論文とは異なる意見も聞きたい。回答しなかった人の傾向は気になる。

〈今後の研究は?〉
・今後の研究の方向性について悩んでいる。実際に虐待のあった施設で、なぜその虐待があったのか?について調査している。修論では、職場全体で虐待に取り組むこと重要としたが、この調査の中では、個人的要因もあったのではと考えるようになった。インタビュー調査などで深める必要がある。

「量的調査研究の意義や疑問」印象記(4)

2012年9月20日 木曜日

そして最後に、そうした修士論文の調査研究を進める中で感じた「正直な思い」について、お話していただきました。

まず、松本さんは、量的な調査研究を始めるにあたって、質的な調査研究に対して「偏見」を抱いていたと言います。それは、対象が少ないため、そのサンプリングによる一般化や分析過程の可視化に限界があるのではないかというものでありました。しかし、量的な調査研究を進める中で、そうしたことは量的な調査研究でも同じように言えるのではないかと感じるようになったと言います。

それから、そうした量的な調査研究を進める中での苦労・不安について話されました。そこでは、量的調査研究を進める中で、何が間違っているのか分からないことの不安や、分析の中に恣意が入ってしまうことの不安があり、そうした不安の中で有意差に執着してしまうことや、さらには有意差が出るように研究を進めてしまうことへの違和感があったと言います。

最後に、松本さんは、そうした修士論文を振り返り、量的調査研究を行って達成感や満足感がある一方で、この研究結果をどこまで一般化できるのかという普遍性への疑問・不安があることについて話されました。また、そうした量的調査研究の結果を現場の人に見せるとき、有意差などといっても分からないのではないかということを提起され、今後の課題として、現場との対話を重視し、現場に役立つ研究、研究の現場への還元を目指したいと考えているということについて話されました。

「量的調査研究の意義や疑問」印象記(3)

2012年9月18日 火曜日

それから、その後大学院において認知症グループホームにおける虐待予防対策に関する調査研究を進め、昨年度執筆した修士論文の概要について、お話していただきました。

松本さんは、大学院において、認知症グループホームの介護職員が求める虐待予防対策とは何かというテーマのもとで、量的調査の手法を用いた調査研究を進め、昨年度修士論文「認知症グループホームにおける介護職員が求める虐待予防策の検討―虐待予防策の因子構造と属性との関連をもとに」をご執筆されました。

そうした「虐待予防策」というテーマを選んだのは、近年認知症高齢者が増加し、ケアの需要が高まる中で、グループホームが急増し、その閉鎖性の高さから虐待リスクが指摘され、また、メディアなどでも虐待の実態が報じられているにもかかわらず、グループホームの虐待に関する研究は少なく、ましてや虐待を防ぐための研究が少ないことによるものであったと言います。

そこで、松本さんは、修士論文おいて、新聞記事や文献のレビュー、プレ調査(自由記述・インタビュー)をもとに、本調査として、グループホームで働く介護職員1000名に対して、虐待予防に関する55項目からなるアンケート調査を行い、そこで得られたデータの因子分析を通して、グループホームにおける介護職員が求める虐待予防策について検討されました。

その中では、「職員への負担感軽減」「職員の知識・能力の向上」「職員への支援体制」「職場の専門性の向上」という、虐待予防策に関する4つの因子構造と、そこで虐待予防のために職場全体で取り組むべき対策や職員に配慮するような取り組みの必要性、また、そうした予防策に対する職員の属性による認識の違いについて考察されました。

「量的調査研究の意義や疑問」印象記(2)

2012年9月16日 日曜日

まず、大学院で認知症クループホームについての研究を始めるに至った「本当の」研究背景について、お話していただきました。

松本さんが大学院で認知症クループホームについての研究を始めるに至った「本当の」研究背景は、大学を卒業後に就職された北海道内の認知症グループホームでの経験に基づくものであったと言います。

松本さんは、大学で福祉について学ぶ中で、「最初は介護職に」、とりわけグループホームで「一番難しい」とされる「認知症ケアに取り組んでみたい」と思うようになり、大学学部卒業後、当時北海道内でも先駆的な活動を進めていた認知症グループホームに就職されました。そして、そのグループホームで働く中で、ある問題意識を感じるようになったと言います。

まず、グループホーム内にある習慣に依拠したケアや「ケアは気持ちでできる」という考えへの違和感から、客観的な知識をもとに、何が求められているのかを客観的に捉え、それを客観的に説明することの必要性を感じるようになったと言います。そして、そうしたグループホームの現場では、職員の精神的・肉体的な負担が高いにもかかわらず、そのような介護職の立場で研究・問題提起がなされていないことの問題性を感じるようになったと言います。

しかし、松本さんは、そうした問題を一介護職として提起することの限界を感じ、そのため、大学院に進学し、認知症クループホームについての研究を始めるに至ったと言います。

「量的調査研究の意義や疑問」印象記(1)

2012年9月14日 金曜日

2012年7月29日に開催されました研究会「量的調査研究の意義や疑問」の様子をお伝えいたします。まずは、松本望さんによる話題提供について、簡単に記しておきたいと思います。

松本さんの話題提供は、「量的調査研究の意義や疑問―認知症グループホームにおける虐待予防をテーマにした量的調査研究を通して」と題されたものでした。

その中では、(1)大学院で認知症クループホームについての調査研究を始めるに至った「本当の」研究背景、(2)大学院において量的調査の手法を用いて認知症グループホームにおける虐待予防対策に関する調査研究を進め、昨年度執筆した修士論文の概要、(3)そうした調査研究を進める中で感じた「正直な思い」について、お話していただきました。