『社会調査叙説』第1回

後藤隆著『社会調査叙説:影操りの世界定め』を連載しています。今回は第1回目として「序」の部分を掲載いたします。この連載については、本ブログ2月18日付記事「連載開始のご挨拶」もご参照ください。

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社会調査叙説:影操りの世界定め

 本論に先立って、表題の後半「影操りの世界定め」に簡単な説明を加えておいた方がわかりやすいだろう。

 「影操りの世界定め」の内、「世界定め」がおそらく最も耳慣れないものだろうが、これはもともと歌舞伎の用語である。歌舞伎では、顔見世興行や春興行において、どのような時代背景、人物設定をもち、どのような事件などを扱った作品を演じ示すかを、予め、既に観客に受け入れられ「当たり」をとった前例などを手本に、劇場主(太夫元)や脚本家(立作者)が打ち合わせをする。この打ち合わせを通じて、ある年のある興行ではおおよそこんな芝居を披露すると決めることを、「世界定め」と呼ぶのである(木下康二『歌舞伎の話』、講談社学術文庫、2005、153-154頁)。筆者は、その「世界定め」に社会調査をなぞらえることが、等身大の社会調査を理解するにあたって、適切だと考えている。

 では、「世界定め」になぜ「影操りの」と条件が付くのか。

 それを説明するには、「影」が、一般に言えばデータに対応するものであることから始めなければならない。

 言うまでもなく、データは、およそ社会調査について論じようとするならば、その基幹と目されて相違ない。つまり、社会調査とはデータをえようとする活動のことであり、データとして記録する活動であり、データを分析する活動である。そうした活動をどのように実現するかについての実用的な手続きを整理したものが、いわゆる社会調査法やデータ分析(技)法と呼ばれるものである。 

 しかし、data の単数形 datum がもともと「与えられたもの」を意味するにせよ、社会調査を論じるにあたって、データが既にある形で手元にあることから口火を切るならば、明らかに拙速であり、なにかを素通りしている。

 なにか?

 ※続きは《こちらのPDFファイル》でお読みください。

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