社会調査の系譜とNPOサーベイ(4)

(前回よりつづき)

matsuoルイス・ハインの話題をつづけます。前回はハインがカメラを手にして「ソシオロジカル・フォトグラファー」と呼ばれるようになり、児童労働の調査に乗り出したところまでお話ししました。

ハインはフィールドワークを重ね、数多くの働く子どもたちの写真を撮影することに成功しました。これらの写真の多くには一見してわかる特徴があります。被写体である子どもたちのまなざしです。鋭く、真っすぐに、わたしたちを見つめています。

Manuel

nn

子どもたちは撮影されることに緊張していたのでしょうか。見知らぬ撮影者を前に身構えていたのでしょうか。それともハインによる演出でしょうか。興味はつきません。

ハインの活動は写真を撮るだけでは終わりませんでした。これらの衝撃的な写真を携えて、世間に児童労働禁止を訴えていきます。

Making-Human-Junk表現の工夫もしています。写真をただ見せるのだけでなく、それらを有機的に並べ、キャプションをつけることで、訴求力を高める工夫をしました。フォトストーリー法と呼ばれたドキュメンタリー写真の伝統的な方法ですが、それを考案したのはハインだとされています。

こうしたハインの活動は社会学の世界とも交錯しました。以前このブログでとりあげたポール・ケロッグとも深い関係があり、ピッツバーグ調査に参加しています。ピッツバーグでも人々の労働と生活の諸相をカメラに収めました。

ハインはアカデミズムの外側にいる人でした。しかし見方を変えれば、社会調査の本筋を歩んだ人でもありました。

「学問のための学問」という意味でのアカデミックな活動には一切関わることはありませんでしたが、自分の関心を追究すべくフィールドに出て、そこで得たものを世間に向けて表現し、訴えていったのです。少なくとも私にとっては、尊敬すべき社会調査の先人であり、憧れのアイドルの一人なのです。

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