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話題提供者より

2010年9月13日 月曜日

私は調査初心者および現場&研究両事者という立場から、「現場に役に立つ研究を考える」というテーマで、私の悩んだ体験を中心に話題提供をさせていただきました。話題提供の内容は以下の二点です。

(1) 修士論文のテーマ設定の経緯

「現場に役に立つ」テーマ設定を目指し苦労しました。複雑多岐にわたる「現場」で起こっていることに対する自分の「思い」がある一方で、研究の作法(ex.テーマの焦点化、概念化、先行研究のレビューなど)にのっとったテーマ設定が求められる。その上「現場に役に立つ」ことを目指したので苦労をしました。

(2) アンケート調査に対する現場側の不信感が感じられるエピソード

今回の勉強会でみなさまから様々なアドバイスをいただき、自分の研究計画の甘さに気づかせいただいたり、また勇気をいただいたりしました。

最も大きな収穫としては、改めて「表現すること」の重要さを認識できたことです。研究計画の段階では、なぜこのテーマが重要なのか、なぜこの調査方法でやるのか、といったことをきちんと説明できるようにすること、そして調査を終えた後はご協力いただいた方に研究成果をきちんとフィードバックする(論文をただ渡すだけではなく、現場の方になじみやすいように工夫もする)ということ。

自分では「役に立つ」と思っていても現場にとっては必ずしもそうではないこともあるし、その逆もある。「役に立つ」ことを意識しつつ現場とのコミュニケーションを密にしていき対話の中でより良い形を見つけていく姿勢を大切にしたいと感じました。

勉強会で貴重なご意見をいただきましたみなさま、そしてこのような機会をいただきましたNPOサーベイのみなさまに改めてお礼を申し上げたいと思います。

社会調査懇談会コメント(6)

2010年8月30日 月曜日

社会調査懇談会「その悩みや思いを語る」にご出席くださった方々からさまざまなコメントを頂戴しました。

そのいくつかをこのブログで紹介しています。第6回目は泉暁さんから寄せられたコメントです。以下引用します。

調査で自分自身の立場・意図・目的をどのようにうまく伝えていくのか。そして、被調査者の人たちがどのような利益を得るのか。これらを示すことが重要ではないかと考えています。

(話題提供者の上村勇夫さんの調査について)

アンケートで「困難」ばかり聞くのではなく、逆に「満足」「楽しみ」は聞いていないのでしょうか。同業者の人たちに「上村さん個人がどのような意図でやっているのか」をどのように説明したのでしょうか。

どうもありがとうございました。当日配布された参考資料についてはこちらからダウンロードできます。当日の模様については当ブログ8月11日付記事の印象記もご参照ください。

社会調査懇談会コメント(4)

2010年8月23日 月曜日

社会調査懇談会「その悩みや思いを語る」にご出席くださった方々からさまざまなコメントを頂戴しました。

そのいくつかをこのブログで紹介しています。第4回目は西倉実季さんから寄せられたコメントです。以下引用します。

決して論文化されないようなエピソードや体験談ばかりで、うんうんと頷くことばかりでした。セルフヘルプ効果のある集まりだったと思います。

自分としては、私の研究を通して、調査対象者の困難が社会に媒介されていけばいいなという思いでやっていたのですが、現場の人(支援者)にもっとも評価されたのは、英語でしか読めない海外の研究や動向をまとめたことに対してでした。

この経験を通して、「役に立つかどうか」は最初から掲げるような目標というよりは、事後的にしかわからないものなのではないかと思うようになりました。「役に立つ」のかどうかを判断するのは、研究者ではなく現場だと思うのです。

もちろん、なんとか役に立ちたいという気持ちであるとか、成果のフィードバックをつねに念頭に置かなければいけないことは、その通りだと思うのですが…。

また、ひとことで“現場”といっても、私の場合ですが、当事者、支援者、家族など様々な立場の人がおり、利益関係が対立しているときもあるので、難しいです。

どうもありがとうございました。当日配布された参考資料についてはこちらからダウンロードできます。当日の模様については当ブログ8月11日付記事の印象記もご参照ください。

社会調査懇談会・印象記

2010年8月11日 水曜日

去る7月31日に開催された社会調査懇談会「その悩みや思いを語る」では、盛りだくさんで深い話題について、多くの人たちと語り合えました。このブログでは次回以降参加者のみなさんのコメントを掲載していきますが(週2回更新予定です)、まずは私が当日の様子を振り返ってみることにします。

はじめに上村勇夫さんから「「現場に役に立つ」研究について考える」と題した話題提供がありました。上村さんは日本社会事業大学大学院に在学中で、知的障害者とともに働く特例子会社の一般従業員の困難感についての調査に取り組まれています。

上村さんは大学院生・調査者という立場であるとともに、同時に調査対象である特例子会社に勤務もされています。研究と現場との関係性や距離感などについて、きわめて敏感にならざるを得ない立場にいるわけです。

話題提供をうけて、参加者みんなで意見交流を行いました。とても多様な顔ぶれでしたが、とくに興味深かったのは調査者の立場にある研究者や学生だけでなく、被調査者の立場にある実務家や現場の人も参加してくれたことでした。

そもそも調査研究が「役に立つ」ものなのかどうかじたい議論の余地はありますが、誰にとって役に立つのか、どのように役に立つべきなのか……。「役に立つ」という問題構成に着目したことであらためて、社会調査が多様な立場の人たちが向き合うコミュニケーションであり、そうであるがゆえに多様な捉え方があるのだ、と再認識しました。

今日では社会調査はさまざまな逆風を受けている面もありますが、必ずそれを求める人がおり、また、それを役に立てることができる可能性があるのだと思います。そうした可能性を形にする工夫が私たちに求められているのだと感じました。

「調査という表現」コメント(1)

2010年5月18日 火曜日

研究会「調査という表現」にご出席くださった方々からさまざまなコメントを頂戴しました。

そのいくつかをこのブログで紹介していきます。第1回目は伊藤静香さんから寄せられたコメントです。以下引用します。

「調査」を「表現」といった切り口から捉えたこの研究会はとても有意義な会でした。私は教員調査でその結果を報告書にしたのですが、自分も10年以上英語を教えていた身ですので、教師に「役に立つ」ようなものにしたく、教員向けに表現したら、教員の方からは「研究者だけど現実的な提言がためになりました」とコメントをいただきました。しかし学術的には科学的表現ではないと、研究者からは軽く見られました。役に立つものと学術的なもののジレンマ、きびしいところです。

どうもありがとうございました。なお研究会での報告レジュメはこの記事(小倉)この記事(松尾)でご覧になれます。