‘社会福祉調査’ タグのついている投稿

「盲ろう者へのインタビュー調査に挑む」記録(5)

2011年8月19日 金曜日

去る7月23日に開催された研究会「盲ろう者へのインタビュー調査に挑む――通訳介助者から調査者へ」の様子をお伝えしてきました。第5回目の今回は、話題提供者の松谷直美さんからの感想をご紹介します。

昨日は発表をさせていたきありがとうございました。実は、昨日から「私しか出来ないこと」ずっと考えていました。そして、今日は盲ろうの方と外出して自分で通訳をしたことで、今まで何の気なしにやっていること(手話と言葉とは文法が異なる)は以前から分かっているはずでしたが、日常のことですからすっかり頭から抜け落ちていたことを発見しました。なんだかわくわくしてきました。また、対面性の困難なども改めて考えています。皆様に色々と貴重なご意見をいただいてありがとうございました。

どうもありがとうございました。当日の模様については当ブログ8月5日付記事の印象記などもご参照ください。

「盲ろう者へのインタビュー調査に挑む」記録(3)

2011年8月12日 金曜日

去る7月23日に開催された研究会「盲ろう者へのインタビュー調査に挑む――通訳介助者から調査者へ」の様子をお伝えしています。第3回目の今回も出席者の方々の声をを紹介します。

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松谷さんの調査のテーマである「盲ろう者」「盲ろう者の就労」についてのコメントも頂きました。

福田桂さん

自分もアッシャーを持っているが、症状が軽く日常生活では何も問題ないけど、調査結果によるとインタビューされたアッシャーのほとんどが仕事欲しいとか今までの苦しみの重いこと等、色々知れて良かった。

匿名の参加者の方

もし今後視野狭が進んだとしましたら、他人事ではない問題だと感じました。失明して退職した先輩の話も聞いていましたので、その先輩は最後はパソコン業務をしていて、それがいいとも言っていたそうでした。継続して仕事をできなくなると思うと難しいと思いました。人間関係も大きいのではと思っている所もあります。調査結果、研究結果が出て、知識や周知が早く行われるといいと思いました。

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どうもありがとうございました。当日の模様については当ブログ8月5日付記事の印象記などもご参照ください。

「盲ろう者へのインタビュー調査に挑む」記録(2)

2011年8月8日 月曜日

去る7月23日に開催された研究会「盲ろう者へのインタビュー調査に挑む――通訳介助者から調査者へ」の様子をお伝えしています。第2回目の今回からは出席者の方々の声をを紹介します。

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社会調査論、調査方法論の観点からのコメントを紹介したいと思います。

有末賢さん

「障がい者の就労に関する研究」となると、社会福祉学の領域に入ることになるが、「社会調査論」として重要になるのが、支援者→調査研究者になっていく意味について考えることであると思った。
インタビュー調査上の困難をもうすこし分類して、(1)対面性の困難、(2)言語手段の困難、(3)感情と共感の問題などにおいて、それぞれの調査上の問題をつむぎ出していくことが重要なのではないでしょうか。

岩舘豊さん

リアリティを損なわない分析は、自分自身にもはねかえってくる問いでした。インタヴュー法の難しさと可能性を考えさせてくれる話題提供だったと思います。ありがとうございました。

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どうもありがとうございました。当日の模様については当ブログ8月5日付記事の印象記などもご参照ください。

「盲ろう者へのインタビュー調査に挑む」印象記

2011年8月5日 金曜日

去る7月23日に開催された研究会「盲ろう者へのインタビュー調査に挑む――通訳介助者から調査者へ」の様子をお伝えしていきます。まず第1回目は当日の様子をまとめてみたいと思います。

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松谷直美さんの話題提供は「調査対象者のリアリティを損なわない分析方法について考える――アッシャー症候群の盲ろう者の就労に関する研究」と題したものでした。

もともとは通訳・介助者として盲ろう者と関わっていた松谷さんですが、現在では大学院に入学し、盲ろう者の就労をテーマにした研究に取り組まれています。その経緯からはじまり、盲ろう者とのインタビュー調査の進め方やその問題、支援者であり調査者であることの難しさと可能性などについて話してくださいました。

盲ろう者へのインタビューにはさまざまな難しい点があります。手話や触手話、指点字、拡大文字、筆談など、いろいろなコミュニケーション手段を用いなければなりません。また、抽象的な語彙では充分に理解しあえない場合があり、具体的な事例を示して確かめ合いながら説明する必要もでてくるとのことです。

そのためどうしてもインタビューは長時間に及ぶことになります。1回のインタビューに休憩をはさみながら5時間も費やすそうです。

言葉の問題はとても重要です。そもそも手話と言葉とは完全に重なり合うものではありません。やはり一般的に言って、手話は語彙や表現力が限られているそうです。したがって、手話で表現されたことをそのまま読み取って言語化するのは、果たして適切なやり方なのだろうか、という悩みが生じてくるのです。話者が伝えようとしているリアリティは、限られた手話表現の枠の中におさまりきるものだったでしょうか。

松谷さんはインタビューを逐語録に起こすにあたって、手話、表情、態度、表現の強弱などを総合的に読み取って、それを逐語録の記述にも反映させるそうです。こうして言語化するのは簡単な作業ではありません。しかしそれでもやはり、分析の素材となる言語化された逐語録は、すでにリアリティを損っているのではないかという疑念は拭いきれません。逐語録の内容をすべて話者に確認してもらうことは、現実的には無理だという悩みもあります。

このような難しさを多分に抱えた調査ですが、それでも諦めることなく挑んでいけるのは、調査者である松谷さんが、それ以前に支援者であったからだといえるでしょう。

ふだんから密な関係を持ち信頼関係を確立している支援者でなければ、障害、病気の進行、就労の苦労といった、重たい話題にまで踏み込んでいくことは難しいように思います。そもそも慣れていない人では、コミュニケーションをとること自体が簡単とはいえないのです。通訳がいたとしても、通訳との相性によっては意思疎通がとりづらいこともあるそうです。

支援者が調査者になることには問題もあります。しかし松谷さんのお話しや、研究会に参加してくださった盲ろう者の方のお話しを伺っていると、現実的にいって、支援者でなければこのような調査は不可能に近いのではないかと感じました。

支援者が調査者になると、良くも悪くも共感的な態度で調査にいどむことになりがちです。松谷さん自身はそのデメリットにも言及されていました。しかしその共感は、松谷さんの調査研究の根本になっており、欠かすことのできないものであるような印象を受けました。強い共感を前提とし、共感に導かれて行われる調査。これも社会調査のひとつのあり方なのだと思います。

社会福祉援助技術としての社会調査(予告です)

2010年2月7日 日曜日

oshima社会調査のうち、社会福祉分野で行われる社会調査があります。多くは「社会福祉調査」と呼び、前回触れたように社会福祉援助技術(ソーシャルワーク/ social work)のひとつとして位置付けられています。

このNPOサーベイの活動を行うなかで、社会福祉援助技術としての社会調査とは何ぞや? という点を考える機会がたびたびありました。

と、申しましても、このblogに目を通して下さる方の多くは社会福祉分野の方ではない、ように思われます。そこで、次回から数回に分けて、「社会福祉援助技術としての社会調査」をテーマに更新していきたいと思います。前提となる社会福祉援助技術の全体像にも触れつつ解説を試みます。

よろしくお付き合いください。

(つづく)