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調査を語る(3) 東京大空襲に出会う

2014年3月6日 木曜日

連載「NPOサーベイ、調査を語る」の第3回目です。この連載では木村豊による東京大空襲調査のフィールドを訪ねています。これまでの第1回第2回ではビデオ映像をお届けしましたが、今回からは趣向を変えて、座談会の模様をお伝えしたいと思います。

この座談会に参加したのはNPOサーベイのスタッフです。木村のほかに、上村勇夫、岩舘豊、松尾浩一郎のあわせて4人が集まりました。横網町公園の東京都慰霊堂などを歩いたあと、両国のとある喫茶店で4人の対話が行われました。木村の調査を題材としつつも、それぞれが社会調査についてさまざまな考えを述べ、意見を交換したのです。まず最初の話題になったのは調査を始めた動機、きっかけです。

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東京大空襲に出会う

(上村)木村さんはどうして東京大空襲に興味をもたれたんだろう。まずはその辺から改めて聞かせていただけたら……。

(木村)そうですね、どこにきっかけみたいのを見るかっていうのは難しくて。自分が学部3年の時に、戦後60年で、そのとき社会科の教員免許を取ったり、あとは博物館の学芸員の資格をとったりしていたので、教材研究だったり、展示実習だったり、そういうので、戦争の問題を取り上げていた中で、東京大空襲というものと出合ったっていうのが、きっかけといえばきっかけなんですけど。
まあ、出会ったっていうことは、すごく偶然に見つけたっていうのに過ぎないような感じがしていて。そこから、卒業論文、修士論文、そして今の博士論文まで、続けてきたっていうのは、今思い返してみても、なんで自分はこんなに続いたのかなっていうことがすごくあります。ただきっかけ自体は、すごく偶然に近いなって。それで、続けてきた、続けられるのは何でかなっていうふうに自分でも思いますね。

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(上村)学部生のときの教材研究などで取り上げたということだけど、さらにもっと知りたいって思うようになったのは?

(木村)そうですね、まあ、社会科の教員になるための授業を取っていくと、歴史とか地理とか政治経済とかある中で、全部に専門性は持てないので、どこかひとつをピックアップして、専門的に学んで、自分のオリジナルの授業とか教材を作るのをやるんです。それで私は、人があまりやりたがらないような単元っていうのを、やりたくて。でも、戦争やハンセン病の授業をつくって見たけれど、物足りないなって感じがして、もうちょっと続けてみようかなっていう感じがして。

(岩舘)戦争のことはもっと知りたいっていうのは話してて分かったんですけど、でもじゃあ東京大空襲で、かつ、その人たちに直接話を聞きに行こうっていうふうになったのは、どうしてだったんですか?

(木村)自分の中で大きかったのは、墨田区に「すみだ郷土文化資料館」っていうのがあって、空襲の体験画を収集している資料館なんですけど、そこで4年生の時に博物館実習っていうのを3週間やったんです。資料館の展示を作るという役割で関わらせてもらったんですけど、そこでいろいろ体験者の方とか紹介して貰ったり、実際に体験を書いた人の話を聞いたりしました。それはすごいインパクトがあって、やっぱり、社会科をやってたんで、空襲を受けてすごい被害を受けたっていうのは何となく知った気でいたんだけれども、空襲の絵を見たときに、なんか自分が知っていた空襲イメージみたいなものが、壊れるような感覚っていうのがあって。

(松尾)それはどういうイメージだったの?

(木村)イメージの中でも本当に大変だったんだろうなっていうのは、もともとあったし、体験記なんかも読んではいたんですけど、体験画の中で、その素人が描いた絵なので、うまくはないんですけど、なんかものすごい力強いタッチの絵が……。なんて言ったらいいのか分からないんですが、すごいショックを受けて。
展示っていうのは、研究と同じで、表現する一つの方法なんですけど、これを資料展示していいですよって言われて、自分に何ができるんだって、これ自分が勝手に並べちゃっていいのかって、すごい葛藤があって。それをなんか、苦しみながら、自分の展示を作りたいっていう。こう、デッサンをつくって出すんですけど、出した時に、やっぱり、もっと知らないとダメだなっていう風に感じちゃったっていうのはあります。東京大空襲をやろうっていう風になったなかでは、そこがすごい大きいです。

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(つづく)

「NPOサーベイ、調査を語る」(2)

2014年3月3日 月曜日

先日はじまった連載「NPOサーベイ、調査を語る」。サーベイのスタッフ木村豊が取り組んでいる東京大空襲調査に焦点を当てています。前回は「東京大空襲調査のフィールドから・前編」と題して、東京都墨田区を歩き大空襲の傷跡を訪ねる様子を、ビデオ映像でお伝えしました。いかがだったでしょうか。

今回は第2回目をお届けします。「東京大空襲調査のフィールドから」の後編です。主役である木村にインタビューをして、いろいろなことを聞いています。話題となったトピックには次のようなものがあります。

  • 「はなしをしずかにきく」
  • 調査を始めたきっかけ
  • 調査の「問い」
  • 調査の方法
  • 慰霊堂でインタビューする理由
  • 調査の難しさ
  • 調査をつづける動機

およそ9分間の映像です。ぜひご覧ください。このページで再生できない時はこちらのリンク「NPOサーベイ 調査を語る 両国編 2」からどうぞ。

これからも週2回、月曜と木曜に更新していきます。次回もご期待ください。

連載開始「NPOサーベイ、調査を語る」(1)

2014年2月27日 木曜日

「ゆるやかで多様な調査経験の場」づくりをめざしてNPOサーベイが活動をはじめたのは、今から5年前の2009年のことでした。これまで色々な試みをしてきましたが、とくに力を入れてきたのは、社会調査の最前線でご活躍なさっているさまざまな方をお呼びして、研究会やワークショップなどを開催することでした。

こうした研究会やワークショップでは、いつも興味深い話題提供があり、刺激的な対話があったように思います。いろいろな方々の調査経験や考えを聞き、多くの刺激をいただくことができました。そして今、こうしたことを受けて感じるのです。次は私たちの番ではないか、と。

サーベイのスタッフもみな、それぞれの形で自分の調査研究に取り組んでいる調査者です。ひとりの調査者としてどのようなことを行っているのか、どのようなことを考えているのかを、みなさんに向けて表現してみたらどうだろう。また、それを踏まえてサーベイのスタッフたちで語り合い、その議論のあらましをまとめて、みなさんに投げかけてみたらどうだろう。そう考えたのです。

かくしてここに、私たちからみなさんに向けて発信する場をつくることにしました。題して「NPOサーベイ、調査を語る」。普段の研究会やワークショップとは趣を変えて、インターネットを舞台としてみたいと思います。これから私たちのブログ「NPO Survey Speak Out!」で連載をしていきます。

まず先陣を切るのは木村豊です。サーベイでは事務局を担当しています。東京大空襲に焦点をあわせた調査に取り組んでいます。彼自身とサーベイのスタッフで、彼の東京大空襲調査をめぐってエクスカーションや座談会、そしてインタビューなどを行い、その様子を映像と文章にまとめてみました。

これから8回にわたって連載をします。第1回目となる今回はビデオ映像をご覧頂きたいと思います。木村の主なフィールドである東京都墨田区を訪れて、東京大空襲とその調査を見つめようとするものです。およそ10分間程度です。ぜひご鑑賞ください。

このページで再生できないときは、こちらのリンク「NPOサーベイ 調査を語る 両国編 (1)」からもご覧になれます。

連載は月曜と木曜の週2回更新です。ぜひ今後の連載にもご期待ください。(つづく)